2026.09.06 カテゴリ:相続 監修:竹田司法書士・社労士事務所
相続が発生したものの、遺産分割をしないまま何年も放置してしまっている――そうしたご家庭は少なくありません。実は、令和5年4月に施行された民法改正により、相続開始から10年が経過すると、遺産の分け方に大きな制限がかかるようになりました。本記事では、この「10年ルール」と呼ばれる制度について、例外や経過措置も含めて解説します。
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10年ルールとは
遺産を分けるとき、生前に多額の贈与を受けていた相続人がいれば「特別受益」として、被相続人の介護や事業に貢献した相続人がいれば「寄与分」として、それぞれ取り分を調整することができます(民法903条・904条の2)。ところが、民法904条の3 により、相続開始から10年を経過した後にする遺産分割では、この特別受益・寄与分を考慮した分け方(具体的相続分)を家庭裁判所に対して一方的に主張することができなくなりました。10年を過ぎると、原則として、法定相続分または遺言による指定相続分を基準に分けることになります。
遺産分割そのものができなくなるわけではない
ここで誤解されやすい点があります。10年を過ぎたからといって、遺産分割そのものができなくなるわけではありません。あくまで制限されるのは、特別受益・寄与分を考慮した具体的相続分を、相続人の一人が他の相続人の意思に反してでも家庭裁判所に主張できる権利だけです。民法907条1項は、被相続人が遺言で分割を禁じた場合や相続人間で分割しない旨の契約をした場合を除き、共同相続人はいつでも協議で遺産分割ができる と定めています。相続人全員が合意すれば、10年を過ぎた後でも、特別受益・寄与分を踏まえた内容で分けることは今でも可能です。ただし、一人でも合意しなければ、10年経過後に具体的相続分を家庭裁判所へ主張することは、後述の例外にあたらない限りできません。
10年の期限にも例外がある
民法904条の3には、2つの例外が定められています。1つ目は、10年が経過する前に家庭裁判所へ遺産分割の請求(調停・審判の申立て)をしていた場合です。2つ目は、10年の期間満了前6か月以内にやむを得ない事由があり、その事由が消滅してから6か月以内に家庭裁判所へ請求した場合です。いずれも、単に相続人同士で話し合いを続けているだけでは例外にあたりません。家庭裁判所への申立てという手続きが必要になる点に注意が必要です。
古い相続にも適用される(経過措置に注意)
この10年ルールは、施行日(令和5年4月1日)より前に発生した相続にも適用されます。もっとも、施行と同時に権利が失われると混乱が生じるため、経過措置として5年間の猶予期間が設けられており、「相続開始から10年を経過する時」と「施行日から5年を経過する時」のいずれか遅い時まで猶予されます。数十年前に亡くなった方の遺産分割を済ませていないご家庭も珍しくありませんが、この猶予期間の終わりも近づいてきています。心当たりのある方は、早めに手続きを進めることをお勧めします。
遺産分割を放置することのリスク
特別受益・寄与分を主張する権利を失うことに加えて、遺産分割を放置していると、不動産の名義もそのままになり、その間にさらに相続が発生して関係する相続人の数が増えてしまうという問題も生じます。相続登記の申請義務化(不動産登記法76条の2)とも関わる問題であり、遺産分割を先延ばしにするメリットは基本的にありません。トラブルなく早期に解決するためにも、相続が発生したら早めに遺産分割協議を進めることが大切です。
よくある質問
Q. 特別受益・寄与分の主張ができなくなると、まったく考慮されなくなりますか?
A. 家庭裁判所に一方的に主張することはできなくなりますが、相続人全員が合意すれば、特別受益・寄与分を踏まえた内容で分割することは可能です。合意ができるかどうかが分かれ目になります。
Q. 10年が経過しそうですが、まだ相続人同士で話し合いがまとまっていません。どうすればよいですか?
A. 話し合いが長引きそうな場合は、10年が経過する前に家庭裁判所へ遺産分割の調停・審判を申し立てておくことで、10年経過後も特別受益・寄与分を考慮した分割を主張できます。期限が近い場合は早めのご相談をお勧めします。
Q. すでに相続開始から10年以上経っている古い相続がありますが、もう手遅れですか?
A. 経過措置により、施行日(令和5年4月1日)から5年間の猶予期間が設けられています。まだ間に合う可能性がありますので、早めにご相談ください。
竹田司法書士・社労士事務所では、遺産分割協議書の作成や、相続開始から年数が経過してしまっている相続のご相談も承っております。堺市はもちろん、大阪府内で相続に関するご相談をお考えの方は、お気軽にご相談ください。
※本記事は令和8年9月6日時点の法令・制度に基づいて作成しています。その後の法改正等により内容が変更されている場合がありますので、あらかじめご了承ください。最新の内容については、当事務所までお問い合わせください。
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