相続税の基礎控除と不動産の評価方法

 カテゴリ:相続
監修:竹田司法書士・社労士事務所

相続税は、一部の資産家だけに関係するものと思われがちですが、都市部に不動産をお持ちの方などは、思いのほか身近な問題になることがあります。本記事では、相続税の基礎控除の仕組みと、特に誤解されやすい不動産の評価方法について、制度の基本を分かりやすくご紹介します。

①相続税の基礎控除

相続税には基礎控除という非課税の枠があり、遺産の総額が基礎控除額の範囲内であれば相続税はかかりません。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます(相続税法15条1項)。例えば法定相続人が3人であれば、3,000万円+600万円×3人=4,800万円が基礎控除額となり、遺産の総額がこれを超える場合に相続税の申告が必要になる可能性があります。なお、法定相続人の数え方には特則があり、被相続人に養子がいる場合の算入制限のほか、相続放棄をした方がいる場合でも、その放棄がなかったものとした場合の人数で数えることとされています(同法15条2項)。つまり、相続放棄をした方がいても、その方も人数には含まれるため、放棄によって基礎控除額が減ることはありません。この基礎控除額は平成27年1月1日以後開始の相続から適用されているものです。

②不動産の評価方法(時価主義の原則)

相続税を計算する際の財産の価額は、原則として「取得の時における時価」によるとされています(相続税法22条)。もっとも、この「時価」を統一的・客観的に把握するため、実務上は国税庁の財産評価基本通達に基づいて評価するのが原則とされています。財産評価基本通達は法令そのものではなく、国税庁内部の通達ですが、最高裁判所令和4年4月19日判決も、相続財産の評価は原則としてこの通達による画一的な評価によることを前提とした判断を示しています。

③土地の評価――路線価方式・倍率方式

土地のうち、市街地的な地域にあるものは、路線価方式で評価します。路線価とは、簡単に言えば「その道路に面した土地1平方メートルあたりの、国税庁が毎年公表する目安の価格」のことで、「路線価×各種の補正率×地積」により評価額を算出します(財産評価基本通達11項・13項)。路線価は国税庁のウェブサイトで地域ごとに公開されており、どなたでも確認することができます。路線価が定められていない郊外部等の地域では、代わりに「固定資産税評価額×国税局長が定める倍率」で評価する倍率方式を用います(同通達11項・21項)。こちらも簡単に言えば、毎年送られてくる固定資産税の通知書に記載された評価額に、決められた倍率をかけて求める方法です。

ここで注意していただきたいのは、路線価は公示地価のおおよそ8割程度の水準を目安に定められているという点です。そのため、相続税で使う土地の評価額は、実際の売買価格である実勢価格よりも低くなる傾向があります。ただし、評価額と実勢価格(鑑定評価額)との差があまりに大きい場合には、通達によらない評価を求められることもあります。実際に前述の最高裁判所令和4年4月19日判決でも、通達に基づく評価額と不動産鑑定士による鑑定評価額との間に大きな差があった事案が問題となり、「評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には」通達によらない評価も許容される旨が示されています。評価額が低くなるからといって安易に判断せず、あくまで制度上の原則として理解しておくことが大切です。

④建物の評価

建物(家屋)については、原則として固定資産税評価額をそのまま相続税の評価額として用います(財産評価基本通達89項)。土地のように独自の評価方式は用いず、市区町村から送付される固定資産税の課税明細書等に記載された評価額をそのまま確認する形になります。なお、賃貸している建物(貸家)については、借家権割合(30%)を控除した評価減があります(同通達93項・94項)。

よくある質問

Q. 不動産会社の査定額をそのまま相続税の申告に使えますか?
A. いいえ。不動産会社の査定額は実勢価格(時価)に近い金額ですが、相続税の申告では、路線価方式・倍率方式による相続税評価額を用いるのが原則です。両者は異なる基準であるため、査定額をそのまま申告に使うことはできません。

Q. 路線価はどこで確認できますか?
A. 国税庁のウェブサイトで、毎年7月頃に最新の路線価図・評価倍率表が公開されます。地域ごとに検索して確認することができます。

Q. 路線価と固定資産税評価額は、どちらが高いのですか?
A. 一般には、路線価の方が固定資産税評価額よりも高い水準になります。目安としては、路線価が公示価格のおよそ8割であるのに対し、固定資産税評価額はおよそ7割とされているためです。ただし、路線価は毎年評価替えされるのに対し、固定資産税評価額は原則として3年に一度の評価替えのため評価の時点にずれがあり、地価の変動状況によってはこの関係が逆転することもあります。

Q. 具体的な相続税額を知りたい場合はどうすればよいですか?
A. 相続税がかかるかどうかの判断や具体的な税額の計算は専門家の分野になりますので、個別の税額については専門家にご相談いただく必要があります。

竹田司法書士・社労士事務所では、相続手続き全般についてサポートしております。堺市はもちろん、大阪府内で相続に関するご相談をお考えの方は、お気軽にご相談ください。

※本記事は令和8年9月11日時点の法令・制度に基づいて作成しています。その後の法改正等により内容が変更されている場合がありますので、あらかじめご了承ください。具体的な税額計算・申告要否等については専門家にご確認ください。最新の内容については、当事務所までお問い合わせください。

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