相続人がいない人の財産はどうなる?相続財産清算人の選任から国庫帰属までをわかりやすく解説

 カテゴリ:相続
監修:竹田司法書士・社労士事務所

身寄りのない方が亡くなったとき、あるいは相続人の全員が相続放棄をしたとき、残された財産はどうなるのでしょうか。このような場合に使われるのが「相続財産清算人」の制度です。本記事では、清算人が選ばれるまでの流れ、手続にかかる期間と費用、特別縁故者への財産分与とその期限、最後に財産がどうなるのかを解説します。

相続人がいないとき、まず「相続財産清算人」が選ばれる

民法は、「相続人のあることが明らかでないとき」は、相続財産を法人とすると定めています(民法951条)。そして、利害関係人又は検察官の請求により、家庭裁判所が相続財産の清算人を選任し、遅滞なく公告します(同法952条)。

「相続人のあることが明らかでないとき」には、身寄りがない場合のほか、相続人全員が相続放棄をして、結果として相続する者がいなくなった場合も含まれる、と裁判所は案内しています。令和5年4月1日施行の民法改正で、それまでの「相続財産管理人」という名称が「相続財産清算人」に改められました。

申立てができる人と、申立先・費用

申立てができるのは、被相続人の債権者、特定遺贈を受けた人、特別縁故者など(利害関係人)と、検察官です。申立先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です(裁判所「相続財産清算人の選任」)。

空き家が問題になる場面では、市町村長が、空家等の適切な管理のために特に必要があると認めるときに、家庭裁判所へ清算人の選任を請求することもできます(空家法14条1項)。

費用は、裁判所の案内によると、収入印紙800円分、連絡用の郵便切手、官報公告料(5,582円。家庭裁判所の指示があってから納付)です。そのほか、清算人が財産を管理するための費用が不足するおそれがあるときは、「予納金」の納付を求められることがあります。金額は事案や裁判所によって異なります。東京家庭裁判所(令和6年10月版)は、被相続人の預貯金などが十分にない場合は原則100万円と案内し、大阪家庭裁判所(令和8年1月版)は、おおむね100万円程度で、申立て後に決まるとしています。事前に、申立先の裁判所の案内を確認してください。

公告の期間は、最短6か月

家庭裁判所は、清算人を選任した旨と、相続人がいるなら一定の期間内に権利を主張してください、という旨を併せて公告します。この期間は6箇月を下ることができません(民法952条2項)。債権者や遺贈を受けた人への「請求を申し出てください」という公告は、2箇月以上の期間で、同じ期間内に満了するよう並行して行います(同法957条1項)。

令和5年の改正前は、これらの公告を順に行っていたため、手続の確定まで最低10か月かかりました。改正後は、並行して進められるため、最低でも6か月に短縮されました。

期間内に権利を主張する人が現れなければ、相続人の不存在が確定します。相続人と、清算人に知れなかった債権者・受遺者は、その後は権利を行使できなくなります(同法958条)。

特別縁故者への財産分与と、3か月の期限

相続人がいない場合、被相続人と特別な縁のあった人が、家庭裁判所に財産の分与を申し立てることができます。特別縁故者と呼ばれるのは、次の3類型です。

  • 被相続人と生計を同じくしていた人
  • 被相続人の療養看護に努めた人
  • その他、被相続人と特別の縁故があった人

申立ては、相続人を捜索するための公告で定められた期間の満了後3か月以内にしなければなりません(同法958条の2第2項)。

期限を過ぎた申立ては、不適法として認められないのが一般的な扱いです。期限の最終日は、事案ごとの公告の内容によって異なります。申立てを考えている方は、早めに家庭裁判所か専門家にご確認ください。

また、特別縁故者として認められるかどうかは、家庭裁判所が判断します。通常の交際の範囲を超えない縁故にとどまる場合などは、認められないことがあるとされています。

残った財産は、最終的に国のものになる

債権者などへの弁済をして、特別縁故者への分与がされなかった財産は、国庫に帰属します(民法959条)。ただし、被相続人が不動産の共有持分を持っていた場合は、先に特別縁故者への分与の対象になり、分与がされないときに、他の共有者に帰属します(同法255条。最高裁平成元年11月24日判決)。

財産を渡したい人がいるなら、遺言が有効な手段になる

相続人がいない方が、財産を渡したい人を決めておく方法の一つが遺言です。最高裁平成9年9月12日判決は、相続人はいないが、相続財産の全部を受け取る「包括受遺者」がいる場合は、「相続人のあることが明らかでないとき」に当たらないとしました。この場合は、清算人を選任する手続を経る必要がありません。

一方、財産の一部だけを割合で渡す遺言(一部の包括遺贈)や、特定の財産だけを渡す遺言(特定遺贈)しかない場合に、清算人の選任が必要になるかを直接判断した最高裁判決は見つかっていません。学説は分かれており、清算人の選任が必要となる場合があります。遺言の内容は、個別の事情によって異なりますので、作成の前にご相談ください。

気をつけたい期限

  • 相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(民法915条1項)。期間内に限定承認や放棄をしないと、単純承認をしたものとみなされます(同法921条2号)。期間は、家庭裁判所に請求して伸ばしてもらえる場合があります。
  • 特別縁故者の財産分与の申立ては、相続人を捜索するための公告期間の満了後3か月以内(同法958条の2第2項)。
  • 公告の期間は、清算人の選任から最短6か月(同法952条2項)。

司法書士にご相談いただけること

司法書士は、裁判所に提出する書類の作成と、それに関する相談をお受けします(司法書士法3条1項4号・5号)。相続財産清算人の選任申立書などの作成のご相談も可能です。書類の作成は、ご本人の意向を整理して書面にする範囲で、ご本人に代わって主張を組み立てたり、裁判所とのやり取りをしたりすることは含まれません。

なお、司法書士に、家庭裁判所の手続を代理する権限は法律上ありません。代理人が必要な場合は、専門家にご相談ください。

遺贈や財産分与を受けた場合の税金の扱いは、税の専門家か、お住まいの地域の税務署にご確認ください。

よくある質問

Q. 相続人がいなければ、財産はすぐに国のものになりますか?
A. いいえ。清算人の選任、公告、債権者などへの弁済、特別縁故者への分与を経て、残った財産が国庫に帰属します。

Q. 予納金は必ず100万円かかりますか?
A. 必ずではありません。東京家庭裁判所・大阪家庭裁判所の案内では100万円が基準とされていますが、事案や裁判所によって異なり、申立て後に決まります。

Q. 空き家の管理が心配です。誰が申し立てられますか?
A. 利害関係人のほか、空き家の適切な管理のために特に必要があるときは、市町村長も家庭裁判所へ請求できます(空家法14条1項)。

竹田司法書士・社労士事務所では、相続に関するご相談や、裁判所に提出する書類の作成のご相談も承っております。堺市はもちろん、大阪府内で相続に関するご相談をお考えの方は、お気軽にご相談ください。

※本記事は令和8年10月22日時点の法令・制度に基づいて作成しています。その後の法改正等により内容が変更されている場合がありますので、あらかじめご了承ください。最新の内容については、当事務所までお問い合わせください。

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