2026.09.20 カテゴリ:労務管理 監修:竹田司法書士・社労士事務所
パートタイムや有期契約の従業員を雇っている事業主の方にとって、令和8年10月1日は大切な日です。この日から、従業員に書面などで示す労働条件に、新しい項目が一つ加わります。示さないと過料の対象になることもあります。この記事では、何が変わるのか、いつ・誰に必要なのか、示さなかった場合にどうなるのかを整理します。
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① 何が加わるのか
パートタイム・有期雇用労働法(正式名称は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)では、パートタイムや有期契約の従業員を雇い入れたとき、事業主は労働条件のうち一定の事項を、文書の交付などで明示しなければならないとされています(同法第6条第1項 )。明示すべき事項は省令で定められており、これまでは「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4つでした。
令和8年10月1日からは、この省令(同法施行規則第2条第1項 。施行前のため、e-Govでは「未施行」の版として表示されます)に第4号が新設され、「法第14条第2項 の規定による説明を求めることができる旨」を明示することが必要になります。従来の第4号だった相談窓口は、第5号に繰り下がります。つまり、通常の従業員との待遇の違いについて、内容や理由の説明を求めることができるという旨を、通知書などに書いておく必要があるということです。
この追加は、法律の条文そのものの改正ではなく、令和8年厚生労働省令第87号による省令の改正です。この省令の附則には、施行期日を定める規定のみがあり、経過措置の定めはありません。
② いつ、誰に必要なのか
法律の条文は「雇い入れたとき」と定めています。これについて、厚生労働省の通達(令和8年6月29日付の解釈通達の一部改正)は、有期雇用の従業員の契約更新は「雇い入れ」に当たるため、更新のたびに明示が必要になるとしています。つまり、雇い入れのときだけでなく、契約を更新するときも対象になります。なお、更新時の扱いは、法律の条文そのものではなく、通達で示されている点にご注意ください。
対象となるのは、パートタイムや有期契約の従業員を雇う事業主です。今回の省令改正には、会社の規模による猶予の定めも見当たりません。中小企業であっても、10月1日以降に雇い入れる場合や契約を更新する場合には、新しい項目の明示を考える必要があります。
③ 示さなかった場合はどうなるのか
第6条第1項 に違反した者は、10万円以下の過料に処せられます(同法第31条 )。今回新設される項目も、省令で定められた明示事項ですので、これを示さなければ第6条第1項 の違反になり得ます。厚生労働省のリーフレットでも、新しい明示事項を含めて違反した場合は10万円以下の過料に処される旨が示されています。なお、10万円は上限額であり、必ず10万円になるという意味ではありません。
過料のほかにも、国は事業主に対して報告を求め、助言・指導・勧告をすることができ、勧告に従わなかった場合は、その旨を公表することができます(同法第18条 )。なお、報告をしなかったり虚偽の報告をしたりした場合には、20万円以下の過料という別の規定があります(同法第30条 )。
④ 説明を求められたときの対応
実際に従業員から求められたときは、通常の従業員との待遇の違いの内容と理由、そして待遇を決めるときに考慮した事項を、事業主は説明しなければなりません(同法第14条第2項 )。説明の方法は、厚生労働省の指針(令和8年告示第202号で改正)で、「資料を活用し、口頭により説明する方法」か、「説明すべき事項をすべて記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のいずれかとされています。口頭で説明する場合には、活用した資料を交付することが望ましいとされています。
また、従業員が説明を求めたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをすることは禁止されています(同条第3項)。
⑤ 今のうちに準備しておくこと
10月1日以降に雇い入れる、または契約を更新するときに備えて、労働条件通知書のひな型を見直しておくことをおすすめします。厚生労働省が公表している記載例 では、説明を求めることができる窓口として、部署名や担当者名などを書く形が示されています。あわせて、10月1日からは、事業主が講ずべき措置の指針や、同一労働同一賃金のガイドラインも改正されて適用されます。詳しくは、厚生労働省の解説ページ もご覧ください。
よくある質問
Q. すでに雇っている従業員にも、あらためて明示しなければなりませんか?
A. 省令の附則には施行期日以外の定めがなく、経過措置は置かれていません。そのため、10月1日以降に雇い入れる場合や契約を更新する場合に、新しい項目の明示が必要になると考えるのが素直です。すでに雇っている従業員への扱いなど、個別の判断が必要な場合は、管轄の労働局や専門家にご確認ください。
Q. 書面ではなく、電子メールで示してもよいですか?
A. 従業員が希望した場合は、ファクシミリや電子メールなどによる明示も認められています(施行規則第2条第3項 )。ただし、電子メールなどは書面として出力できるものに限られます。従業員の希望がない場合は、文書の交付が必要です。
Q. パートタイムの従業員が1人だけでも対象ですか?
A. 第6条第1項 は、パートタイムや有期契約の従業員を雇い入れた事業主に課される義務で、人数の下限は定められていません。また、今回の省令改正に会社の規模による猶予の定めは見当たりません。
Q. 従業員から説明を求められましたが、応じなくてもよいですか?
A. 応じる義務があります(同法第14条第2項 )。また、説明を求めたことを理由に、解雇などの不利益な取扱いをすることは禁止されています(同条第3項)。
労働条件通知書のひな型の見直しなど、労務に関するお悩みがございましたら、竹田司法書士・社労士事務所にお気軽にご相談ください。堺市はもちろん、大阪府内の事業主の方のご相談を承っております。個別の事情によって対応が変わることがありますので、具体的な判断は、専門家にご確認ください。
あわせてご覧ください
※本記事は令和8年9月20日時点の法令・制度に基づいて作成しています。本記事で解説している改正は、令和8年10月1日に施行される予定のものであり、施行前の内容です。その後の法改正や通達の追加等により内容が変更されている場合もありますので、正確な内容については、厚生労働省又は管轄の労働局、もしくは専門家に直接ご確認ください。
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